お父さんはあのインパクトの瞬間を忘れない〜初ホームラン〜
元鬼コーチ
2ストライク目まではいずれも外角いっぱいのストライクを打ちにいってファール。うん、タイミングは悪くないぞ。追い込まれたけど弱気にならず、強く振りにいけよ。北神の投手が投げた次の球は、内角膝元のきわどいコース。低めにうまく反応したバットがジャストタイミングで捕らえた打球は、フォロースルーのバットの先端から飛び出し、糸を引くような打球がライトの頭上を越えて、後方の遊具の中に弾んだ。審判が頭上でぐるぐる手を回す。
うぁー、ホームランだ!一塁ベースを回った息子のうれしそうなはにかんだ笑顔(もっとガッツポースしてもかまわんぞ!お父さんは本部席だからガッツポーズができない)
まさか、あの愚息にホームランが飛び出すとは。6年生の終わりまでに、もしかしたら1本くらい打てれば思い出にはなると思ってましたが・・・。公式戦の記念ボールはカプセルに収まって、我が家のリビングに飾られています。
思えば3年生の秋に野球部に入って、徐々に上手くなって4年の春頃からはコンスタントに試合に出してもらえるようになりましたが、さっぱりバットに当たらない。当たってもボテボテの内野ゴロの繰り返し。自信がないのか2ストライクに追い込まれると消極的な見逃し三振ばかり。試合前には「打てないのは仕方ないから見逃し三振だけはするなよ。空振りは仕方ない」とアドバイスして送り出す。しかし、試合になるとまた見逃し三振。ベンチに引き上げてくる愚息に「見逃すなと言っただろっ!」と怒鳴りつけて泣かせてしまったことも何度か。「パパは怒るから試合に来ない方がいい」と言ってるのを聞き、少なからず私もショックを受けて、試合中に怒るのは監督に任せようと思ったのでした。
バッティングセンターで練習したりして、ようやく初安打が出たのは確かもう7月になってました。その後もヒットは忘れた頃にたまに出るだけ。たぶん打率は3割打者ならぬ3分打者くらいだったのではないでしょうか。
そんな秋に時間があったので兄弟を連れてバッティングセンターに行った時に愚息が「左で打ってみたい」と言うのでやらせてみました。打席に立った瞬間に、右よりも背筋が伸びたきれいな立ち方に見え、打球も力強くはないけど割とバットの芯に当てているし、バットがスムーズに前に出ている感じがしました。その時私はひらめきました。「おい、来週から左で打て。先生と監督にはお願いしとくから」どうせ右で打てないので、足も生かせる左の方がマシだろう、卒部まで2年あれば何とかなるだろうと。先生の迎え当番だった翌週の車中で、左にしたい旨話すと、今までも熱心なお父さんからの申し出で何人か途中からやってみたけど、ほとんどうまくいったことがなく、あまり気の進まない様子。「まぁ、どうせ今も打てないんだから見てください」と何とか頼み込み、グランドに着くとちょうどバッテイング練習の最中。先生が愚息を呼んで左で何度か素振りをさせて、打席に入れさせた。2、3球打ったところで「こっちの方がええわ」ということでめでたく左打者転向が決まりました。
左に変わったものの、それまで練習してないので劇的に打率が上がったりはしません。そもそも力がそんなにないので引っ張れない。今度は「凡打でもいいから引っ張れ!当てにいくな」とアドバイス。5年の年末には頼まれてもないのに、追加のクリスマスプレゼントで今までより長いけどかなり軽い80cm550gのバットを買ってやり「大きいのはどうせ打てないんだから、これで内野の頭を越えるライナーを打て」
6年になるとだいぶ力もついてきて外野へも飛ぶようになってきました。しばらく調子が落ちていた先日の唐櫃戦では5安打と1ヶ月分くらいのヒット固め打ちで久しぶりに自信がもどってきた様子(ビヨンドマックス効果かも) その後、監督から「バットが少し軽いから代えろ」と言われ入部時のバットを使ったり、友達のを借りていたので、先週キドスポーツへ行き、かなり長くてそんなに重くない82cm610gのバットを購入。このバットがなかなかデザインが良くて打てそうな感じ(ゴルフと一緒で、この感じは大切ですね)前日のフリーバッテイングではフェンスオーバーはしなくても、いいライナーが打ててました。
そんな紆余曲折を経て巡ってきた愚息のホームラン、ネット裏の本部席からしっかり見てました。もしかしたら、この1本きりかもしれませんが、あの内角低めを捉えたインパクトの瞬間からフォロースルーの後姿はまだ鮮明に焼きついてます。
非力な愚息がこの時期にホームランを打てたことは、他の選手もタイミングさえ合わせれば誰でも十分打てるということだし、監督の練習方法が正しいことを証明したのではないでしょうか。この後もどんどんホームランを打つ選手が増えることを願っています。
P.S.
実は予告ホームラン。
今日はホームラン打つから、必ず見に来てほしいと家内に言っていたそうです。
本当に打てると思ってたかどうかは別にして、見逃し三振王がたくましくなってきました。