「お母さんは見た!君達の底力を!」 Aチームの母 (箕谷野球新聞書き下ろし原稿)
Aチームにとって最後の対外試合『北選手権大会』、対戦相手はオール神戸第3位の星和台。誰もが初めて対戦する強豪チームに武者震いしたに違いない。『相手に不足は無い、かかってこい!!』と思ったのは私だけ? 決戦の朝、愚息が「同じクラスのH君(桜ノ宮北鈴)とH君(北町松ヶ枝)に『絶対勝って俺たちと勝負しようぜ!』って言われたけど、勝てるかな?勝ちたいんや!けど・・・」と気弱な言葉。『大丈夫!この間(まぐれでも)ホームラン打ったし、気持ちで負けたらアカンで!頑張っといで。』送り出す方も力が入る。溜まった家事に悪戦苦闘しつつ、JRの試合も気になるし、Aチームの応援どうしよう?と迷ってると、JRのS君のお母さんに、「残り少ないお兄ちゃんの試合応援に行ったほうがいいわ。JRは大丈夫。」共にAチームのH君のお母さんからも「最後かもしれないのに、行ったほうがいいわ。JRは9対5で勝ったから。」と勧められ、携帯でメールをAチームのY君のお母さんに送る。「2回表0対0」。『やっぱり、行きたい、応援に行こう!』急いで、車を走らせた。その間も、「大丈夫!今いいとこだから急いで=」「まだ点数はいってないよ、4回表0対0」緊迫したメールに『お母さん行くまで0点で抑えといてよ!』と祈りながら、泉台グラウンドへ。
緊迫した試合なのが、ベンチのJ総監督、N監督、コーチ陣、後ろのお母さん方の中腰の姿でわかる。手前のテントでは、H部長をはじめ、H前監督、A顧問、AチームのSコーチ、なぜか北町松ヶ枝チームの選手たちも、鋭い視線を投げかけている。いつもニコニコ応援しているK君のお母さんがいたので、試合経過をきいてみた。「良い試合よ、守りも堅いし、4回裏で、まだ無失点よ。今、2アウト、ほら、次、M君よ。」『ギョ、Mの打順なの?』「よかったね。間に合って」気合十分バッターボックスに立つ息子、体格の良い相手ピッチャーからの球の速いこと速いこと、手も足も出ません。ボール、ボール、2ボール、(あれ?これってファーボールあり?)と思っていたら、『ファーボール』「ラッキー!!ランナー大事に!Y君頼むよ。」相手も動揺したのか、キャッチャーへの暴投で、2塁へ、そこで、期待にこたえてY君ライト前ヒット。「ヤッターY君、M!帰っておいで!ホーム、ホーム!!」2塁から、土けむりたてて3塁回ってホームに着くことの遅いこと、遅いこと、スローモーションを観ているようで、音声が一瞬途絶え、息をのむ瞬間、『セーフ!』ドドッーとどよめきが起こり、先取点でチームの意気がグーと上がった。
『まさか、イケる?』1点死守、頑張れ!一緒くらいに応援に来たO君のお母さんもお父さんも息をのむ展開に『良い試合やね。自分の子供の番になったら、怖いから、車の中で応援しよう。』わかる、わかる私もそうしたいけど、目はなされへん。他のお母さんたちも皆同様。相手チームの監督も予想外だったらしく、怒鳴り声が飛ぶ。5回表、攻撃に力が入る、先頭打者ヒット一塁へ(M! 盗塁しそう、気つけて!)聞こえたか、相手は走って走ってきた。息子は急いで2塁へ送球、ショートのT君がランナーにタッチしてアウト、それを観ていたJRの三男が思わず、『お兄ちゃんが刺した!』(知らない人が聞くと物騒な)と叫んでいた。(ほんとに、奇跡だー)2アウト、ほっとしたのもつかの間、相手一番、二番打者に痛恨の2塁打で、あっさり1点献上。ここでいつものAチームなら緊張の糸が切れるところだが、マウンドのH君はじめチームの皆が違っていた。「みんな、声かけろよ!」キャプテンH君が気を引き締める。後で知ったことだけど、このH君、試合前の練習で足を捻挫、足をぐるぐるテーピングして痛みをこらえての出場、Hヘッドコーチは「大事な試合やのに、アホンダラ」と、これまた大事な息子を気遣った。N監督は足の具合から見てH君の出場は無理と覚悟を決めていたが、すぐに交代させるつもりで出した初回、1アウト3塁のピンチで痛烈なライナーをダイビングキャッチ!!
一気にムードを盛り上げた。(後日、H君は捻挫ではなく、剥離骨折で全治一ヶ月と診断される。痛かったのに、よう頑張った。みんな!キャプテンのこの頑張りを無駄にはしないで、精一杯頑張って、優勝旗をキャプテンにプレゼントするんやで!!)この大事な試合にかける皆の意気込みが伝わる。
『ドンマイ、ドンマイ、1点取り返そう』しかし、6回表にもピンチ、2塁打、送りバントで、1アウト3塁、スクイズ失敗でランナーを三本間で狭殺(き、奇跡だ)またまた2塁打を浴びる、テントの中から、ため息か、驚嘆かの声が漏れる。(まずいな。さすが手ごわい)次の打者が難しいファールフライを上げた。1塁を守るK君のお母さんの顔が固まる、「Y,捕って!」心の叫びを聞いたようにK君、ナイスキャッチ!(さすが、K君)追加点を与えず、6回裏、愚息からの怪?打順、速い球に押されて高いバウンドの内野安打で、奇跡的に塁に出る、続くY君の送りバントがオールセーフになり、(相手の監督が「絶対アウトや」と叫んでいたが、運も実力のうち)ノーアウト1,2塁で、O君がバントの構え、O君のお母さんは恐々見ていたけど、バントが成功すると喜色満面で手をたたいて喜んでいた。「ヤッター!R平」1アウト2,3塁。チャンス、チャンスの時のF君だのみ、有野台戦で悔し涙を流し、一回り大きくなったF君頼んだよ!スクイズを警戒して思いっきりバントシフトした相手もなんのその、鋭く振ったバットからは快音が響き、センター前ヒット、愚息がホームインでき、決勝点となった。
「ヨッシャーもらった!」と思ったのも束の間、Y君が3塁で牽制されると、お母さんたちから、「ああ!惜しい・・」とため息。 そのあと相手キャッチャーが2塁へ悪送球しボールは転々と外野後方に。2塁ランナーF君のお母さんの「K平!走れ〜」の絶叫!3塁ランナーコーチャーH君も必死に手を回す。皆が追加点を確信した瞬間、矢のような送球がキャッチャーに帰り、ホーム寸前タッチアウト。うなだれるF君。しゃがみこむお母さんたち、責任を感じてか肩を落とすランナーコーチH君、大丈夫!!『回れー!回れー!』出場選手が、ベンチの監督やコーチが、応援するお母さんが、そして控えの選手が一丸となって叫んでいたよ!H君はナイスランナーコーチャーだったよ。
7回表、この回さえ抑えれば、勝てる! エースH君が投げる1球1球が愛しくて、「大事に、大事に、落着いて、落着いて」と息を止めて見守るH君のお母さん。『大丈夫!イケる!』『早く終わって!』様々な思いが交錯する中、2アウト1塁、セカンドゴロをO君が自らベースを踏んで、ゲームセットとなった。『R平!、ガッチリ!やったー!!』その瞬間、H君はマウンドでガッツポーズしながら倒れこみ、嬉し涙を流した。『よく頑張った、お母さんは君たちを信じてよかったよ!!うれしくて、うれしくて・メッチャうれしい。』他のメンバーも優勝したように、飛び上がって喜んだ。私の横では、「H君が泣いているのは怪我をしたからなのか?」と的はずれな質問をする三男、お前が嬉し涙を流すのはいつのことやら。・・・お母さんたちは、声が枯れるほど応援し、泣き笑いしながら、「よかった。よかった!」とベンチから引き上げてきた。お父さんの顔に戻ったコーチたちは息子たちを労いながら「よくやった!よくやった!」と連呼していたし、始終冷静に観戦していた、H部長、H元監督、A顧問もAチームのコーチたちと握手をかわし、『良い試合だった!おめでとう!』と言って下さった。皆、素敵な笑顔で勝利を噛み締めていたが、とりわけ、J総監督が一番.素敵な笑顔だった。(正直、先生の顔がクチャクチャになったのを初めて見ました。失礼!)勝利に導いてくださったJ総監督、N監督、コーチ陣に感謝いたします。『ありがとうございました。』モチロン、頑張った息子たち一人一人に『ありがとう』・・・・・応援に来てくれた北町松ヶ枝チームの友達に、『勝った!来週会おうな!』『おう、またな!』とあいさつする息子は今朝と違って逞しく見えた。来週は、待ちに待った松ヶ枝ファイターズとの試合だ!残り少ない試合を悔いのないよう、精一杯のプレーで埋め尽くそう!!『お母さんは信じているよ、君達の底力を!』 お父さんたちは、興奮冷めやらぬ状態で、祝勝会へ。(勝利の美酒に酔ってください。ご苦労様)後日談ながら、仕事で来れなかったF君のお父さんと、勝利を約束していた監督と感激の携帯電話越しの抱擁があったとか、なかったとか。今日、嬉し楽しの修学旅行から帰ってくる息子を捕まえて、練習をさせなくては。でも、この一週間は至福の時で家事もはかどる?!「お母さんは・・・」シリーズが続くことを祈って、『次の試合も、みんなが主役』期待してるよ。